Disce libens

研究にあまり関係しない雑記

2019-01-01から1年間の記事一覧

鴎外『ヰタ・セクスアリス』における性欲

以下に載っけたのは、東京大学性欲研究会誌第9号に寄稿したものである。 タイトルの通り、素材は鴎外の『ヰタ・セクスアリス』を扱っている。こっちに掲載していいと許可してくれた性欲研会長にはお礼申し上げます。会誌第8号は通販しているのでぜひ買ってく…

最初から最後まですべて読む気持ち, Pocock, Barbarism and Religion 1巻 intro

みんな大好きポーコックの時間です。 今までのポーコック関連エントリは以下の通りです。 kannektion.hatenablog.com kannektion.hatenablog.com kannektion.hatenablog.com kannektion.hatenablog.com ポーコックのBRはぐうたらしていた2年生のころから読ん…

イツァーク・ギルボア『不確実性下の意思決定理論』5章のメモ

国際フォーラムでの発表の準備にかかりっきりでしばらく手に余裕がなかったため、最後の更新から日が空いた。 それに加えて短い準備期間で多少無理をきかせたため体調を壊しているという事情がある。げんにまだ熱がある状態であるが、寝てばかりいるのもひま…

イツァーク・ギルボア『不確実性下の意思決定理論』1~4章のメモ

頭の整理にメモをとってみた。 数式は飛ばすか、自然言語での表現に置換するかしている。今回の範囲で出てきたものは理解できた。 1~5章が第一部なのでキリが悪い。各論に入る前の基礎づけの議論に該当する。 1 研究の動機付けとなる例 以下の四つは同様に格…

ベッケンフェルデ "倫理的国家としての国家" つづき

以下の記事の続きです。正直いうと彼の議論の妙味を適切に表現できた自信がありませんが、今回は特に迅速さを優先します。 kannektion.hatenablog.com III-2 b) 物質的自由と自己実現 外的自由と安全の次元と平行して、倫理的、知的自由や自己実現の領域が自…

Kinch Hoekstra, "Hobbes`s Thucydides"(2016)とかのまとめ

表題の論考の紹介になります。これは某カタバシスなんかで紹介されているので蛇足感もありますが、自分なりに読んで理解することも大切なのでいいとします。そのうちトゥキディデスのハンドブックにのってるほうの論考も紹介します。当該論考は思想史研究で…

ベッケンフェルデ "倫理的国家としての国家"

ベッケンフェルデ(1930-2019)が亡くなってしまった。ちょうど古代、中世の法・政治思想についての著作(Geschichte Der Rechts- Und Staatsphilosophie: Antike Und Mittelalter)を読み返していたので衝撃が大きい。彼の研究は今の自分が学んでいる方向性を決…

マルカムとタックのホッブズ研究

Malcolm2002[1]の刊行時点では、彼自身が指摘するように[2]ホッブズの国際関係理論に関する研究は、ホッブズ研究者自身によるものは非常に薄く、国際政治学者が自身の議論を補強するために例示したホッブズ理解が多少影響力を有していた。それは、リヴァイア…

古代ローマにおける宗教 2

前回の続きです Schiavoneの6、 Rituals and Prescription の紹介です 後期共和制においては、古い神官の持っている知恵とはまず第一に慣習mosの擁護者としての役割を担う者とされていた。それは先祖代々続く宗教的社会的慣習を体現していた。 注1 初期のロ…

初期ローマにおける宗教

スキアボーネの The Invention of Law in the West (Ius. L'invenzione del diritto in Occidenteの英訳)の第5章の紹介です(ちなみにスペイン語訳のほうが先に出ている)。全体の半分くらいは読みましたが、その中でも特に未知の事項がおおく、理解しづらかっ…

アンソニー・グラフトン "人文主義と政治理論" 内容まとめ

A.Grafton "Humanism and Political theory "in The Cambridge History of Political Thought 1450-1700 の内容紹介です。 二時間くらいで打ったのでパンクチュエーションがひどいですが許してください。 p9-10i Scholarship and power リプシウスのルーヴァ…